🐄牛のうんち が地域の電気に!?フランス GAEC Robert 牧場のバイオガスプラントを訪ねて

フランス生活

Bonjour!マコマコです。
約1年ぶりに妻の叔母夫婦が営む GAEC Robert 牧場を再訪しました。前回は搾乳ロボットの見学だけで時間が足りませんでしたが、今回は念願の「バイオガスプラント」を見せていただくことに。

牛のふんが電気に変わる!?——信じられますか?

実際に現場を見ると、酪農とエネルギーが見事につながっていることが分かります。

🔗 前回の記事はこちら 👉 フランスの酪農家を訪ねて


🧡 家族のつながりから始まった再訪

妻のお母さんは5人妹弟の長女。その末っ子の叔母 Isabelさん は、妻が小さいとき、お母さんの仕事が遅くなると代わりに迎えに行ってくれたり、一緒に夕食を囲んでくれた大切な存在だです。


そんなIsabelさんのご主人が Pascal さん
Pascal さんが中心となって GAEC Robert 牧場を経営しています。

前回の訪問では、ロボット搾乳機「Lely Astronaut A5」が稼働する牛舎を見学しましたが、今回はその奥にある“もう一つの牧場の特徴、バイオガスプラント(Méthanisation)の現場を見せてもらいました。

夕方18時にきてと Isabel さんからメッセージが。

この時期、18時はまだまだ明るいです。
何やら車が壊れてしまったようで、Pascalさんが対応に追われていて、その間、牧場の中をぐるっと見にいきました。

相変わらずキレイに整理整頓された牧場。牛さんたちも美女ばかりです!


🔋 バイオガスプラントってなに?

「バイオガスプラント」という言葉、聞き慣れない方も多いかもしれません。
ざっくり言うと、牛のふん尿や地域の生ごみなどの有機物を微生物の力で分解して、メタンガスを取り出す仕組みです。

発生したメタンガスは、電気や熱エネルギーとして活用でき、燃やした後に残る液体(消化液)は臭いが少なく、畑にまける良質な”たい肥”として再利用されます。

つまり、牛のふんが「ゴミ」ではなく「資源」に変わるのです。
まさに酪農とエネルギーが循環する、サステナブルな取り組みといえます。

メタンガスを抜けば 畑にまく最高の肥料となります!


デンマークに学び、3基のプラントを設置

Pascal さんによると、この取組はデンマークの成功例を参考に始めたそうです。

GAEC Robert 牧場では、地域の農家と共同で3基のバイオガスプラントを建設。
この施設は2020年に稼働を開始し、搾乳ロボットの導入とほぼ同時期にスタートしました。

建設費はなんと約700万ユーロ(約11億円)
コロナ禍の真っ只中での挑戦でしたが、政府からおよそ40%の補助金を受けて実現したそうです。収益は好調で、5年ほどで投資を回収できそうだとか。

空から見た バイオガスプラント


⚙️ どれくらいのエネルギーが生まれるの?

GAEC Robert 牧場のバイオガスプラントは、1時間に約180Nm³(ノルマル立方メートル)のガスを生産。このガスは地域のガス網に注入され、周辺5つの町へ電力供給を行っています。

Pascalさんいわく、
「夏の時期はほぼ100%、地域の電力をまかなえるんだよ。
でも冬は暖房にガスを使う家庭が増えるから、供給は5%くらいしかできないね。」
とのこと。

夏と冬でエネルギー需要が変わるのも、ヨーロッパらしい現実的な話です。

コンピューター管理されているデータの内容、詳しく説明してくださいましたが、専門的すぎて分かりませんでした。残念。



🌍 地域の力を集める「エネルギー循環」

このバイオガスプラントでは牛のふん尿だけでなく、地域から集められる生ごみも一緒に発酵させています。勝手に来て、勝手に帰っていくらしい。生ごみは、多い時で 1日 10tにもなるとか。

屋上にあがってタンクの中も見せていただきました。
外からだと分かりにくいのですが、発酵している様子が分かり、タンク内の温度は 38〜40℃に保つようにし、これ以上、温度が上がると危険になるため、常に温度管理が欠かせません。


機械化を積極的に行い、オペレーションは2人態勢で出来るそう。
安全対策も欠かせません。

こちらは、バイオガスプラント周辺の”プロ”の掃除屋さんたち笑

Pascalさんはこう話していました。
「自分たちの牧場だけじゃなく、地域全体が恩恵を受けられる仕組みにしたかったんだ。」
まさに、「自分の利益よりも、地域の持続可能な未来をつくる」という志を感じました。


🧮 日本の酪農家からの質問「フランスには牛頭数制限あるの?」

見学を終えると Isabelさんが夕食をつくって待っていてくださいました。
この日は、グリルで焼いた 魚と鶏肉のBBQ。おいしかったなー。


そして、Pascalさんへ質問 TIME。
前回の記事を読んでくださった日本の酪農家の方から、こんな質問をいただきました。

「フランスも畑の面積に対して牛の頭数制限はありますか?」

Pascalさんに聞くと、そうだよ!
ただし「1haにつき1頭」という単純なルールではなく、牛が排出する糞の量(=窒素量)で制限がかけられているそうです。
各牧場では、毎日排出量を測定し、レポートを提出する仕組みとのこと。

動物福祉の考え・アニマルウェルフェアというよりも、環境汚染(特に地下水への窒素流出)を防ぐ目的が強い印象でした。



☀️ 牛のふんがつなぐ、地域の未来

GAEC Robert 牧場の取組を見ていると、
「エネルギーの地産地消」が言葉だけでなく、本当に形になっている ことを実感します。

牛がいて、ふんが出て、電気が生まれて、また畑に返っていく。
自然のサイクルの中で、無駄のない循環が出来てました。

そして何より印象的だったのは、Pascalさんの言葉。

うちの牧場が良くなるだけじゃ意味がない。
周りの人たちと一緒に、地域を支える仕組みにしたいんだ。

牛たちの力と、人の知恵、そして地域の協力。
その三つが見事にかみ合って動くバイオガスプラントの姿に、
“持続可能な農業”のリアルを見た気がしました。

最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。
また次回もお楽しみに♪

À bientôt✋

📝マコマコ